フィンランドよりご挨拶申し上げます。

ヴィンテージ食器の品質についてティーナのヒント – その1

ヴィンテージ食器の品質についてどのような考えをお持ちですか?製造過程でできた小さな欠陥や使用感は気になりますか? それともそのような欠陥や使用感は食器の歴史の物語として語りかけてきますか?それともコレクション用に、コンディションが良いレアな食器をお探しですか?

アンティークフェアでAstialiisaのショップ
アンティークフェアでAstialiisaのショップ

当店では、オンラインショップの商品の品質に関する情報について、常に正確な記載を心がけております。お客様のご要望に合わせて常に様々な新着製品を追加し、急速に商品のバリエーションを拡大している当店では、品質は最重要課題と考えております。また、さまざまな手法で専門的に評価された品質とは、ヴィンテージ食器を購入し使用するにあたって非常に重要、かつ大変興味深いテーマでもあります。

パート1の記事では、生産における品質について、パート2ではコンディションについて特集します。ヴィンテージ食器を購入したり、ご家庭のテーブルセッティングにご使用になるときに、食器から読み取れる、フィンランドの元持ち主の使い方やお手入れや保管方法と品質との関係などが解き明かされます。


1. Arabia工場のスタンプから読み取れる品質のこと。

ヴィンテージ食器のスタンプから、生産時の品質を見極めることが出来ますか?現在のArabiaのスタンプの使用方法や年代に関する知識は、Arabiaの製造監督をしていたEdvin Lindqvist(エドウィン・リンドクヴィスト)の1970年代の幅広い研究が土台になっています。彼の研究は包括的なものではありますが、Arabiaの品質の分類方法と実践は何十年にもわたって変化しているため、残念ながら完璧なものではありません。

1984ー2005年フィンランド製 ARABIA PARATIISI 食器のスタンプ
1984ー2005年フィンランド製 ARABIA PARATIISI 食器のスタンプ

Astialiisaのエキスパートからのヒントをいくつか紹介しましょう:

食器にArabiaのスタンプはありますか?Arabiaの食器の裏にあるファクトリースタンプは、Arabia工場の刻印であり、品質を保証するものです。このようなスタンプのある食器は本物であり、製造上問題がないものと認定されています。しかしそのスタンプ付きの製品でも、陶磁器製品の製造過程で自然にできる形状や質感の微妙な違いが生じる場合があります。

1級品と2級品の区別はつけられますか?Arabiaでは1級品に加えて、ごくわずかな欠陥を含む2級品の食器も販売していましたが、2級品の商品には、Arabiaのファクトリースタンプが付いていません。その代わり2級品のヴィンテージ食器には、点や数字、ローマ数字で(II)や「フィンランド製(MADE IN FINLAND)」とだけ書かれている場合があります。シリーズによっては、2級品を1級品と区別するために、ファクトリースタンプの下にシリーズ名が記載されていないものもあります。

ARABIA ANEMONE ボウル
ARABIA ANEMONE ボウル

1級品にはArabiaのアート部門のデザイナーの署名が書かれています。手描きのシリーズには、食器の裏に二つのイニシャルが書かれており、線で区切られています。最初のイニシャルは装飾デザイナーのもので、二つ目のイニシャルはペインターのものです。1970年代になると、小さなグループで制作されていた手描き製品の生産は次第にスタンプに移行していきましたが、手描きでもスタンプでも、どちらも等しく高品質のハンドメイド製品であり、レアで美しいセラミックペイントのアート作品です。Arabia工場では、2002年のValenciaの食器を最後に手描き生産の伝統が終了しました。食器にサインやスタンプがない製品は2級品である可能性が高いです。

ARABIA VALENCIA スーププレート
ARABIA VALENCIA スーププレート

例外もあるのでご注意ください:

Arabiaのスタンプは、時代によってその様子が大きく異なります。例えばコーヒーカップの場合、ソーサーだけにスタンプがあり、コーヒーカップにはない場合があります。また洗っているうちにスタンプが薄くなり、消えてしまったものもあります。特に釉薬の上につけられたものは、コールドスタンプ方式(cold-stamped)と呼ばれ、使用するにつれ消えてゆきます。例えば、RuskaやKiltaシリーズにはよくあることです。当店は歴史的な知識や専門知識を持ち合わせた専門家がおり、丁寧な鑑定までもが常時可能なため、食器の品質に関しては、安心してお任せください。

現行品は、食器のマークだけで品質を見分けることが出来ません。Arabiaは、2000年代初期からタイやポーランドなどでスタンプ付きの食器の生産を行っています。これらの国では2級品と識別できるスタンプを使用しておらず、1級品と同じものがつけられています。新しい2級品の食器の生産は、シールだけでマークされているため、洗うとはがれます。当店では品質の高いフィンランド製の食器に特化しています。

アラビア工場、ヘルシンキ (撮影: Akusti Tuhka 1953, Museovirasto )
アラビア工場、ヘルシンキ (撮影: Akusti Tuhka 1953, Museovirasto )

Astialiisaの商品状態ランクについて

当店では、クラス1Aをとても良いコンディションの新品として、クラス1Bを新品同様、ヴィンテージ/ユーズド、または新品同様に近い状態としてランク分けしています。小さく目に見える傷がある場合はクラス2または3となります。当店にある全ての北欧ヴィンテージ食器は美しく、安心してお使いいただけます。また商品の概要欄では、コンディションに関する情報を可能な限り詳細に記載するよう心がけております。商品状態ランクにつきましては、こちらをご覧ください

ArabiaとIittala製品の品質基準について

当店では陶器の商品に関しては、Iittala公式のガイドラインを採用しております。

「当陶磁器製品は素地や釉薬の特性上、形状・質感に多少の違いが出たり、表面に小さな黒点や釉薬上のへこみ(ピンホール)が生じることがあります。品質上問題はありませんので、ご安心ください。」

上記と同様に、Iittalaのガラス製品には品質基準として満たされる範囲内での小さな欠陥や気泡がついていることがあります。

アラビア手描きデコレーションの生産 (撮影: Keijo Laajisto 1975, Museovirasto)
アラビア手描きデコレーションの生産 (撮影: Keijo Laajisto 1975, Museovirasto)


2. なぜヴィンテージ食器には現行品にはない魅力があるのか

フィンランドのArabia工場で製造されてきたヴィンテージのセラミック製食器の製造過程と仕上げには、数多くの手作業の工程が含まれています。この手作業から生まれる製品一つひとつの違いこそがヴィンテージ食器の面白さであり、醍醐味です。様々な視点から改めて食器を見つめ、その成り立ちに想いを馳せるのはとても面白いことです。

ヴィンテージ食器の形や大きさや重さには多少のばらつきがあります。 例えばコーヒーカップの耳、つまり取っ手の部分についたわずかなゆがみや非対称性などは、手作業で付けられたためにできたものです。

生産時に釉薬をかける途中に使われた三脚の跡は、食器の裏側に残ることが多く、三脚部分にはつや出しがかかっていないので跡がよく見えます。時には釉薬をかける途中に、食器が移動し、大きな跡がつくこともありました。しかし品質上には問題がなく、生産過程の特徴であると考えられています。このような跡は、KrokusやFaenzaなどの70年代後半の食器によく見られます。私は時々、この食器の上に残っている跡が人間のおへそのように見えるので、思わず笑ってしまいます。

Arabiaのヴィンテージ食器の装飾は主に手描きで施されていました。印刷技術が使用されるようになってからでも、装飾の修正や様々な線などは人の手によって描かれていました。ところで陶器は焼くと最大で20%縮み、色を混ぜることで熱によって違った反応をすることはご存じでしたか?

ARABIA AURINKO 青 プレート
ARABIA AURINKO 青 プレート

生産バッチによって、あるいは素材食器づくりに採用された素材によって、色付き釉薬の強度または色合いに微妙に違いが出るのはよくあることでした。陶芸と手工芸産業は、芸術と職人の技術と工業産業がまぜ合わさった興味深い融合体です。この産業のおかけで、私たちはダイニングテーブルで実った努力の成果物を楽しみ、愛でることができるのですから。

色付きの釉薬はArabia工場の特化した技術の一つであり、Arabiaはその専門性を発達向上させたことでより広く認知されるようになりました。例えばKiltaやTeemaシリーズを通して、釉薬の品質の発展をたどってみると面白いです。オリジナルのKiltaシリーズでは、陶器の粘土の反応によってバラエティー豊かな釉薬の色合いができましたが、のちにTeemaシリーズにビトロ磁器の粘土が使われるようになると、よりなめらかで産業的な外観を生み出しました。

ARABIA KILTA TVセット
ARABIA KILTA TVセット

Arabiaの炻器シリーズの中には、粘土や釉薬の性質による色合いだけでなく色の変化がアーティストのデザインの一部になるように意図的に使われていたものもあります。つまり、あえて一つひとつの作品をユニークにしようとしていたわけです。例えば、Ulla Procopé(ウッラ・プロコペ)はRuskaやMeriシリーズに、またRaija Uosikkinen(ライヤ・ウオシッキネン)はOtsoシリーズの製造過程では、絶妙な色の釉薬が作り上げられました。

ARABIA OTSO シリーズ
ARABIA OTSO シリーズ

釉薬と同じように、Arabiaの手描き装飾の色の濃さにも、実際の塗装パターンのバリエーションの違いにも、食器のハンドメイドの特性がよく表れています。多くの場合、それぞれの食器に生き生きとした違いを出すことは、デザイナーにとって、とても大切なビジョンの一つであり、ペインターにとっても正確なコピーの塗装作業より、一つひとつを制作することの方がやりがいのある作業でした。美しい筆使いやはけ目、ゆっくりと色の変化のあるデザインは、テーブルセッティングに特別な雰囲気を出すため、あえてユニークになるよう作られています。このようなデザインが含まれている魅力的な食器の代表例には、Valencia、Palermo、Anemone、RuijaやRosmarinシリーズなどがあります。

ARABIA PALERMOシリーズ
ARABIA PALERMOシリーズ

手描きに加えて、Arabiaではエアブラシを使った装飾も発展しました。ステンシルを通して食器に色づけをすると、印刷に比べて鮮やかでやわらかな縁の装飾を施すことができたのです。ステンシルでは、色の強度や、鮮やかさのトーンにも変化を加えることができました。Anja Jaatinen-Winquist(アニヤ・ヤーティネン-ウィンクヴィスト)のSaaraシリーズを近くでご覧になったことがありますか?それはまるでフィンランドの夏の白夜に照らされた湖の水面のようで、穏やかな風が、波打つ水面に光と影を映し出している様子が目に浮かびます。

ARABIA SAARAシリーズ
ARABIA SAARAシリーズ

手作業でつけられた装飾にはもちろん、多少のミスや魅力的なアクシデントの跡が残ることがあります。例えば色がはねて小さな点になったり、印刷がゆがんでいたり、部分的に欠けていたり、特定の場所に印刷されていない、などという風に。そして、このような小さな欠陥が受け入れられる範囲のものか否かによって、1級品と2級品との分類が決まります。

パート2では、ヴィンテージ食器のコンディションの評価方法について詳しくご説明します。フィンランドの家庭で使用されていた食器がどのように商品のコンディションのランクに影響を与え、品質評価に影響するかなどについてお伝えします。食器を選ぶときの私は、次のうちどのタイプに当てはまると思いますか?最高品質のものを集めるハンター?それとも小さな欠陥の跡から、食器の歴史を紐解くタイプ……さぁ一体どちらでしょうか?

それでは、フィンランドのヴィンテージ食器ととに、楽しいひとときを。
ティーナ

ARABIA AURINKORUUSU シリーズ
ARABIA AURINKORUUSU シリーズ

ヴィンテージ食器の品質に関して何かご質問がありますか?コンタクトフォームまたは注文ページのコメント欄よりお気軽にお問い合わせください。

出典:

Finnish Design Museum online, Collections

Iittala online, FAQ guidelines

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